今回は、赤羽根 良和先生の「五十肩の評価と運動療法」について紹介します!
書籍情報
「五十肩って何すればいいの?」「すぐ痛いって言われて難しい」など、臨床中にそう思ったことはありませんか?
この本は、運動と医学の出版社の代表である園部 俊晴先生が多くの若いセラピストから肩関節の機能解剖学について学んでも、評価や治療法、処方されるプログラム以外に何をすればいいかわからない
といった声を聞き、臨床家である赤羽根 良和先生に「五十肩の治療として、若手セラピストが”この本を読めば必ず結果を出せる!”そんな本を書くことができますか」と相談した経緯から作られた本です。
内容もその言葉通りで、養成校で学んだ知識からすごい発展したわけではなく、学んでいる知識から+αで臨床過程に結びつけた内容が多く記載されています。
第4章からは、五十肩の病期に合わせた治療の考え方と運動療法を紹介されており、読書後に病期に応じた的確な理学療法ができるようになっているでしょう。
見やすい解剖学のイラストと、実際の治療内容やホームエクササイズが写真で説明されているため、明日からでもすぐに使える内容がたくさんあります。
ただ、後半にあるリラクセーションやストレッチング、関節包の操作などに関しては、それなりの練習が必要です。
同期や先輩に協力してもらい、現在困っている五十肩の患者さんの解決策としていきましょう。
- 五十肩、肩関節周囲炎の疾患に苦戦しているセラピスト
- 肩関節疾患を最近担当するようになったセラピスト
その中で、特に参考になった内容3つをまとめました
見どころ
なんと言っても、五十肩にフォーカスを当てた評価と、運動療法だと思います。
評価では、五十肩に関連する筋群の伸長テストや圧痛部位に関してイラスト付きで詳しく説明されています。
運動療法では、各病期で意識することを案内しつつ、ポジショニング、セルフエクササイズ、テニスボールを使ってのリラクセーションが見どころです。
また、注射療法や薬物療法の効能などに関しても言及していて、患者さんの疼痛コントロールをより広い視野で確認することができます。
疼痛期の五十肩
疼痛期は、組織に炎症が生じている時期であるため、炎症を助長するような刺激を避けることがとても重要となっています。
よって、程よい安静の説明責任をしっかり果たし、炎症を速やかに治めることを意識しましょう。
セラピストの対応としては、患者さん自身に痛みについてよく理解してもらい、中枢性感作や筋攣縮による疼痛をなるべく出さないように指導します。
肩甲胸郭関節の可動域をこの段階から引き出しつつ、肩甲上腕関節の保護を行い、肩関節の負担を軽減するようにしていきます。
拘縮期の五十肩
拘縮期(約1〜3ヶ月)は、炎症の回復過程で軟部組織が線維化し、癒着することで肩関節の可動域が制限される時期です。
安静時痛、動作時痛が軽減しますが、夜間時痛が出現する可能性があります。
また、軟部組織の柔軟性低下により不良姿勢が形成されやすいです。
この時期に無理に姿勢を正すと疼痛が増悪する恐れがあるので、胸郭を挙げて、骨盤を立てる程度にしておくと良いでしょう。
理学療法の目的としては、むやみに物理的刺激を加えてしまうと回復を阻害する場合があるため、
「痛みが伴わない範囲内で可動域制限が減少しすぎないようにとどめておくこと」が重要となります。
肩甲胸郭関節を積極的に行い、肩甲上腕関節を愛護的に行うように心がけましょう。
日常生活動作への指導は、可動域が減少するため支障が増えます。
肩甲骨面上の動きなら比較的楽に動かせるので、肩甲骨面上の動きを中心に肩甲上腕関節は疼痛期より大きく動かすことを意識して行いましょう。
緩解期の五十肩
緩解期(約3ヶ月以上)は、可動域が拡大して疼痛が楽になってきます。タイミングをみて積極的な肩甲上腕関節の運動療法を展開していく時期です。
しかし、論文によっては拘縮期と一緒にまとめられており、明らかな定義は存在しません。
そのため、拘縮期から移行する判断は臨床経験に委ねられることを知っておきましょう。
この時期の理学療法の目的としては、肩甲上腕関節の可動域拡大です。線維化した組織の伸長や癒着した組織の滑走をさせることが重要となります。
その中で、日常生活動作として、結帯動作や結髪動作などの回旋可動域は代償運動できないことが多いため、積極的に拡大していくことが必要です。
最後に、肩関節挙上を回復させる際のポイント2つと、日常生活で必要な肩関節可動域を紹介します。
<肩関節挙上を回復させるポイント2つ>
1,挙上角度が90°超えるために必要な条件→1st外旋20°以上
2,挙上角度が150°超えるために必要な条件→2nd外旋90°、3rd内旋0°以上
1,では、肩関節外旋角度が足りないまま肩関節を挙上すると、第2肩関節の大結節部が鳥口肩峰アーチと衝突し、動きが制限されるためです。
<日常生活で必要な肩関節可動域>
・整髪:屈曲70°以上、外旋70°以上
・洗体:屈曲70°以上、内旋&外旋40°〜60°以上
・更衣:上衣→屈曲70°以上、内旋&外旋45° 以上 下衣→外転25°、外旋30°以上
さいごに
今回は、「五十肩の評価と運動療法」について紹介しました。
解剖学の知識を知っていても、どんな痛みか、なぜ肩が上がらないのか、今何を気をつけてどんなことに注意してリハビリテーションを進めていけばいいかわかんらない。
臨床に出たらそのようなことばかりです。
ですが、今は疼痛期だからそんなに動かさないようにしよう。そろそろ拘縮期から緩解期に移行しているかな。夜間時痛があるってことは今これはしても大丈夫かもしれない、など。
五十肩で困っている患者さんに対して回復過程のイメージをしつつ、その時々で対応ができるようになれます。この本はそんな内容となっています。
このように「知ってる」と「知らない」だけで助けられる患者さんの人数が変わります。
目の前の人を救うきっかけとして、この記事が参考になれば幸いです。
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