膝関節理学療法マネジメント

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本日は、石井 慎一郎先生(監修)と森口 晃一(編集)の膝関節理学療法マネジメントについて紹介します。

書籍情報

書籍名膝関節理学療法マネジメント
著者名石井 慎一郎(監修) 森口 晃一(編集)
発刊日2018/2/3
ページ数360ページ
出版社メジカルビュー社
この本がおすすめな人
  • 膝関節疾患についてレベルアップしたい人
  • 膝関節疾患を多面的方向からみたい人
  • 膝関節の疼痛メカニズムについてもっと知りたい人

膝関節と関節原性筋抑制の関連

本文では、「2章 膝関節の機能解剖とバイオメカニクス」にあるメカニカルストレスについて記述されている部分にメモとして記載してありました。

膝関節に関節水腫が生じる

大腿四頭筋(特に内側広筋)の活動に対し、
関節包や靱帯のメカのレセプターへの侵害性入力によって神経学的抑制回路が形成


筋機能を抑制している状態であり、自己防衛的な反射性筋萎縮として考えられると述べられている

上記では関節水腫を例として説明されていましたが、大腿四頭筋は膝関節の外傷や炎症の影響、活動性低下による廃用が生じやすく、機能障害が生じると動作時の膝関節屈曲運動の制御が難しくなります。

そのため、膝関節の筋力低下を評価する際は、可動域による問題なのか、疼痛による問題なのか、またはそれ以外の神経的な問題なのかを常に多面的に捉える必要があると考えさせられます。

意外と知らない半月板の役割

半月板は、主に荷重を分散膝の潤滑を助けます。

半月板と内側コンパートメント&外側コンパートメント

半月板はそれぞれ、内側コンパートメントと外側コンパートメントと呼ばれる空間が存在します。

内側コンパートメント
荷重の伝達を担い、そこで内側半月は負荷の50%を受けもつ

外側コンパートメント
大腿骨外側顆(凸型)に対して脛骨外側顆(凸型)のため、外側半月は接触面積を増加させる上で大切となる。

このように膝関節は内側と外側半月板の役割が異なっています。

半月板の生力学的作用と神経生理的役割

半月板は、生力学的作用神経生理的役割があります。

生力学的作用
  • 荷重伝達
  • 屈曲回旋運動
  • 静的安定化

神経生理的役割
→半月周縁部以外にも多数のメカノレセプター(ルフィ二終末、ゴルジ・マツォ二小体、パチニ小体、ゴルジ靱帯終末など)が存在する。

この力学受容器(上記のメカノレセプター)は、半月に加わる緊張度合いを認知します。

  • 外側半月板→膝窩筋
  • 内側半月板→半膜様筋

学校の授業では、半月板について形状、荷重分散、潤滑くらいまでの範囲でしたが、
生理学的な屈曲回旋運動の補助や筋緊張度合いの認知・調整などは臨床的な知識だと感じます。

膝関節の疼痛因子

膝関節の疼痛の原因を考える際には、構築学的因子と神経科学的因子(広義)から捉える必要があります。

構築学的因子

正常膝関節においては、侵害受容器は関節軟骨と半月板の中央部以外の全ての関節内、関節周囲組織に存在します。

Dyeらの研究より

Dyeらは局所麻酔を用いて自らの膝関節内をプローブで強く圧迫して疼痛閾値をマッピングした。

↓結果

滑膜膝蓋下脂肪体膝蓋上嚢、(靱帯付着部)で強い痛みが感じられた。

逆に膝関節外の研究をしたIkeuchiらによると

Ikeuchiらの研究

膝痛を有する膝OA患者の膝関節内にリドカインブロック(局所麻酔)を投与した結果し、
70%以上の痛みの軽減がみられた群を効果あり
50%以下の群を効果なしと定義して実施。

その結果、61%が有効 32%が無効であった

つまり、膝関節の膝OA患者における膝関節疼痛に関して

関節内の痛みと、関節外の痛みがあることを示した。

関節内の発痛部位・・・→骨、関節軟骨、半月板、滑膜
関節外の発痛部位・・・→関節包、滑液包、脂肪体、筋・腱、靱帯、神経

神経科学的因子

末梢(関節内・外)の組織に侵害刺激として生じた痛みの情報は、最終的に脳内にある
疼痛関連領域(pain matrix)に伝達されます。

痛みにより活動する主な脳領域
  • 一次体性感覚野
  • 二次性感覚野
  • 視床
  • 前帯状回
  • 前頭前野

それぞれが痛みの情報との識別に関わっています。

本書では、その中で3つの側面に分けて考えました。

それぞれの疼痛に関与する側面
  • 感覚的側面・・・体性感覚野、視床、島
  • 情動的側面・・・視床、島、前帯状回、前頭前野
  • 認知的側面・・・島、前帯状回、前頭前野
感覚的側面とは?

感覚的側面とは、痛みの部位・強度・持続性など痛みの種類を識別する身体的な痛み情報。

情動的側面とは?

情動的側面とは、痛みにより生じる不快感や不安感など不快な情動体験に基づく情報。

認知的側面とは?

認知的側面とは、過去の記憶や予測により痛みの意識を分析・認識する情報。

これらのように、疼痛には身体的な痛みの情報だけでなく、多面的な側面から痛みをとらえていくことが必要です。

さいごに

今回は、「膝関節理学療法マネジメント」について紹介しました。

今回紹介した内容
  • 膝関節と関節原性筋抑制の関連
  • 意外と知らない半月板の役割
  • 膝関節の疼痛因子

膝関節は人体最大の関節であり、荷重と安定性の両方を担う役割があるので、他の関節よりも障害が出現しやすい疾患です。

また、整形分野で働く方は一度は必ず関わる領域だと思います。

上記の内容以外にも、本書では膝関節の痛みに対する評価シート、他関節から膝関節に与える影響、

実際の症例についての考え方など紹介しきれなかった内容がたくさんありました。

このように、「知ってる」と「知らない」で助けられる患者さんは変わっていきます。

目の前の人を救うきっかけとして、この記事が参考になると嬉しいです。

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